AIで3Dゲームを作る、ツールはすべてアセットの層にある
3DゲームのAIツールはモデル・テクスチャ・リギングの3段階をすでに網羅し、出来高制で価格設定され、エンジンに直接ドラッグして試せる。レベルデザインとエンジン内の統合はまだ人に代われるツールがなく、無料枠は基本的に商用利用不可で、AI生成物は米国で著作権保護が受けられないという2つの落とし穴は、最終的に開発者が負うことになる。
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3Dゲームの制作工程を6段に分けると、AIツールは真ん中の3段をすでに埋め尽くしている。両端はまだ空っぽだ。
Steamの開示データを見ればそれが分かる。第三者の索引 AI Transparency Index は2026年9月21日の時点で2万2千件以上のAI開示を収録しており、そのうちAIをアート制作に使ったと明記しているものが1万7千3百件あまり、コード生成に使ったと書いているものは2千7百件あまり、そして実行時に実際にAIを走らせているもの(NPCの会話、リアルタイム生成映像)は732件で、全体の3%にとどまる。
この記事ではパイプラインの順に沿って、現在使えるツールを並べていく。それぞれ公式リンク、無料枠、商用利用の境界を添える。参照したのは公式の料金ページとドキュメントで、確認できなかった部分は最終節にまとめて挙げ、二次情報であると明記する。
パイプライン上の6段、状況は段ごとに大きく違う
| 工程 | AIツールのカバー状況 |
|---|---|
| コンセプトとレベルデザイン | 人を置き換えられるツールはほぼない |
| 3Dモデル(プロップ、キャラクター) | 成熟。1点ごとの課金 |
| テクスチャとPBRマテリアル | 成熟。一度に一式出力できる |
| リギングとアニメーション | ツールはあるが、モデリングとは別系統のフロー |
| シーンとワールド構築 | 出てくるのは空間アセットで、レベルではない |
| エンジン内での統合 | エンジンベンダーがそれぞれ独自に対応。Unrealは公式のものを見つけられなかった |
以下、この順で述べる。
3Dモデルが最も成熟している
この段に共通するのは1点ごとの課金で、出力はGLBかFBX、そのままエンジンにドラッグして試せる。違いは無料枠、制御性、商用権にある。
| ツール | 無料枠と価格 | 特徴 |
|---|---|---|
| Meshy | 無料は月100 credits、毎月1日UTC 0時にリセット。商用利用は有料プランのみ | テキスト/画像から3D生成、ゲームアセット向け |
| Tripo | 無料は月200 credits、およそ13モデル分。APIは1 credit = $0.01、テキストからの3D生成は10〜20 credits | テキスト/画像/マルチビューから3D生成 |
| Hyper3D / Rodin | 無料枠は結果を見てから支払えるが、エクスポートできるのは旧モデルのみ。Creator $30/月で約60モデル、Business $120/月で約416モデル、フルAPIと商用ライセンス込み | 制御性が高く、3D ControlNet(バウンディングボックス、ボクセル、点群)、部分編集、Remixがある |
| Kaedim | 商用は見積もり制 | 生成後に人間の3Dアーティストが仕上げる。スタジオ向け |
| Sloyd | 無料枠は1日1回生成。Plus $15/月。APIは$1 = 75 credits | 従量ではなくサブスク課金。パラメトリック生成で、ハードサーフェスやプロップの形状が比較的予測しやすい |
| TRELLIS / TRELLIS.2 | オープンソース、MITライセンス | Microsoftの4Bパラメータの画像→3Dモデル。最大1536³のPBRアセット |
| Hunyuan3D-2.1 | オープンソース、ライセンス表記はOther。使う前にLICENSEを読むこと | Tencentの3Dアセットモデル。公式によればHunyuan 3DシリーズのHugging Faceでのダウンロード数は300万を超える |
この段で繰り返し挙がる問題は、プレビュー画像が良くてもエンジンに入るとは限らないという点だ。第三者のレビューでよく見る不満は、生成物が平気で20万ポリゴンあったり、N-gonを含んでいたり、UVが重なっていたり、テクスチャにライティングがベイクされていたりするというもの。モデルが使えるかどうかを決めるのはトポロジー、UV、ポリゴン数であって、レンダリング画像ではない。
シーンとワールドは空間アセットを出力する
| ツール | 説明 |
|---|---|
| Marble(World Labs) | テキスト、単一画像、複数画像、パノラマ、動画、粗い3D構造を入力にでき、永続的でナビゲート可能な3Dワールドを生成する。ガウシアンスプラッティング、メッシュ、テクスチャをエクスポートでき、ゲームエンジンとDCCでの使用を公式に明記している |
| Tencent Hunyuan HY World 2.0 | 3DGS、Mesh、点群を出力。公式はUnityとUEへの接続、自由歩行と物理コリジョンに対応するとしている |
| HunyuanWorld 1.0 | 2025年7月にオープンソース化された3Dワールド生成モデル。論文 |
| Blockade Labs | 360°環境とスカイボックス。Unityネイティブプラグインがあり、BlenderとUnrealへエクスポートできる |
Marbleの公式ドキュメントは各ステップの所要時間を出している。ドラフトが約20秒、パノラマが約30秒、ワールドが約5分、ワールド拡張が約5分、高品質メッシュが約1時間。この1時間はこのパイプラインで最も覚えておくべき数字だ。ワールドを生成することと、使えるワールドを手に入れることの間にはまだ1工程ある、ということだから。
これらのツールが出すのは空間アセットで、コリジョン、ナビゲーションメッシュ、ゲームプレイのトリガーはエンジン側で作る必要がある。省けるのはシーンを組む美術の時間であって、レベルデザインの時間ではない。
テクスチャとPBRは一度に一式出せる
| ツール | 説明 |
|---|---|
| Scenario | テキストまたは画像からシームレスなPBRテクスチャを生成し、albedo、normal、roughness、metallic、height、AOを一度に出力。マテリアルごとにモデルを分けることも、自前のテクスチャモデルを学習させることもできる |
| Unity Material Generator | Unityエディタ上で直接PBRマテリアルを生成。プロトタイプ段階ではこれが一番手軽 |
| Poly | テキストから8KのPBRテクスチャを生成。タイリングとアップスケールに対応 |
| PLAYTEX AI | 元画像1枚から7枚の揃ったPBRマップを出力。emissionを含み、さらに360° HDRIも付く |
この層はパイプライン全体で費用対効果が最も高い。「テクスチャを手作業で作ってベイクする」が「一文で説明する」に置き換わるからだ。プロトタイプ環境を作る段階では、モデル生成よりもここで節約できる時間の方が大きい。
リギングとアニメーションは別途2ステップ必要
生成されたモデルにはボーンもアニメーションもない。キャラクターをシーンの中で走らせたければ、さらに2ステップが要る。
| ツール | 説明 |
|---|---|
| Anything World | 自動リギングと2000以上のアニメーション。プラグインはBlender、Maya、3ds Max、Unityに対応。二足キャラクター、動物、プロップのいずれもリギングできると公式は謳う |
| DeepMotion | 動画からモーションキャプチャのアニメーションを生成。Unreal用の連携ツールあり |
| Move AI | マーカー不要のモーションキャプチャ。スマホで撮影するだけでよい |
| Meshcapade | 人体モデリングとモーションキャプチャ |
| Cascadeur | 物理演算を補助に使ったアニメーション制作。生成系ではないが、大量のキーフレームを省ける |
この工程が最も過小評価されやすい。モデルの生成品質と、リギング済みアニメーションの実用性は別の話だ。前者はすでに十分良いが、後者はまだ人手で整える必要がある。
エンジン内のAIはそれぞれ別に動いている
- Unity。Muse は2025年10月1日に終了し、機能は Unity AI に統合された(Unity 6.2以降)。推論パッケージ Sentis は com.unity.ai.inference に改名され、2.6版が2026年3月20日に更新された。
- Roblox。Cube 3D は1.8Bパラメータの生成モデルで、150万点の3Dアセットで学習しており、オープンソース版がある。Studioでは
/generateでメッシュを生成でき、Lua APIも用意されている。 - NVIDIA。ACEとGame Agent SDK はオープンソースのオンデバイス向けソリューション。リポジトリ にはC99 ABIとC++ラッパーがあり、4つのモデルを合わせて約3 GBを内蔵し、プレイヤーのGPU上で動く。導入事例にはTotal WarシリーズのPHARAOHアドバイザー、PUBGのCo-Playerキャラクター、inZOIのSmart Zoisがある。
- Unreal。AI生成に関する公式のものは見つけられず、サードパーティのプラグインしか見当たらなかった。例えばInworldのNPCプラグインやDeepMotionのモーションキャプチャ連携だ。この欄はひとまず空けておく。Unrealに何もないという意味ではない。
NVIDIAがオンデバイスに舵を切った点は個別に触れておく価値がある。クラウド型NPCのコストはプレイヤーのプレイ時間に比例して増える。開発中は安く、リリース後は成功するほど高くつく。モデルをプレイヤーのGPUに押し込むのは、この問題への直接的な答えだ。
ここまでのものを繋ぐ
| プロジェクト | どう繋いでいるか |
|---|---|
| godogen | 2つのClaude Code skillで役割を分け、片方が計画、片方が実行を担い、タスクごとに新しいコンテキストを開く。Geminiが2D画像を出し、Tripo3Dが画像から3Dを生成。Godotの850以上のクラスのAPIドキュメントを自前で書いて学習データの不足を補い、実行中のスクリーンショットをGemini Flashに食わせて視覚チェックし、z-fighting、テクスチャの欠落、シーンのリンク切れを拾う。成果物は本物のGodot 4プロジェクト。READMEには1回の生成に数時間かかると明記されている |
| OpenGame | CUHKの学術プロジェクト(論文)。qwen-codeをベースにし、OpenGame-Benchを同梱。評価時には生成されたゲームを実際に動かして駆動する |
| 商用プラットフォーム | Rosebud AI はブラウザ上でゲームを生成。商用権は月$30から。Ludo.ai はアセット寄りで、Unityプラグインがある |
godogenの流れで最も面白いのは視覚チェックの工程だ。モデルが書いたコードはコンパイルが通っても、画面が正しいとは限らない。自分が走らせたスクリーンショットを見せるのは、テストケースのない場所に検証の層を1枚足すことに等しい。
実行時生成のデモは驚異的だが、制約も厳しい
もう一つの道は、モデルにコードを書かせず、世界モデルにリアルタイムで映像を生成させる。この道のものは最もSFらしく見え、完成したゲームからは最も遠い。Genie 3の公式ブログは自ら5つの制約を挙げている。
- 行動空間が限られている。agent が直接できる行動の範囲はまだ狭い
- 複数の独立した agent が共有環境でどう相互作用するかは未解決の問題だ
- 実在の場所を正確に再現できない
- テキストは入力の記述で指定されたときにしかはっきりしない
- 連続したインタラクションは数時間ではなく数分しかもたない
同じブログにもう一つ数字がある。環境の一貫性は数分保ち、視覚記憶はおよそ1分前まで遡れる。Oasis の言い方はもっと直接的で、モデルページには物理エンジンはなく、ベースモデルが一つあるだけだと書かれている。Microsoft の Muse は Nature に載り、位置づけはゲームプレイの構想であって完成品のゲームではない。
二つの落とし穴
二つ目の落とし穴は著作権だ。米国著作権局の立場では、完全に AI が生成し人間の創作性が不十分な作品は著作権で保護されない(公式文書、2025年のプレリリース版)。この帰結は具体的だ。金を払って生成したキャラクターを他人がそのまま真似しても、止められない。
プラットフォームのルールとプレイヤーの感情が重なり、この層のリスクは最終的に開発者が負う。Steam は2024年から生成 AI の開示を義務づけ、その後「プレイヤーが実際に触れる内容」に対象を絞り、効率化のためのツールは含めないとした(PC Gamer の報道)。プレイヤーの反応にもデータがある。ある論文が Steam の英語レビュー50.8万件を分析したところ、AI の使用を開示したゲームは推薦率が低く、全体の感情はプロシージャル生成(PCG)のゲームよりも否定的だった。600件のレビューの主題分析では、プレイヤーは「生成 AI を使った」を開発者の手抜きと読んでいた。
私の判断
これらのツールが変えるのはアセット制作の工程だ。モデル、テクスチャ、リギングの三段階はコストがすでに下がっており、プロトタイプや小規模なインディー作品を作る人が最も恩恵を受けている。レベルデザインとエンジン内での統合に対応するツールはなく、この二段階は依然として人手に頼っている。
三つの数字だけ覚えるなら、この三つを選ぶ。アート系の開示が1万7千件余りでコード系が2千7百件というのは、AI がアートには入ったがゲームプレイには入っていないことを示す。ランタイム AI が732件しかないのは、「AI ネイティブのゲーム」がまだデモの段階にとどまっていることを示す。Marble が高品質なメッシュを生成するのに1時間かかるのは、生成から実用までの間にもう一道の工程があり、その工程を今のところ省けるツールがないことを示す。
検証していない部分
この記事は実測していない。どのツールも実際には動かしておらず、価格、無料枠、機能の説明はすべて公式ページと論文によるもので、取得日は2026年9月22日だ。こうしたツールの価格と無料ポリシーは変わりやすいので、使う前に公式ページで一度確認してほしい。
読みかけの箇所がいくつかある。Valve の元の告知ページは取得できず、Steam の開示ルールの件は報道記事に基づいて引用するしかなかった。Move AI と Meshcapade は公式サイトのトップページしか読んでおらず、価格ページは読んでいないので、価格は書いていない。CSM.ai や Luma Genie のようなものは表に載せていない。トップページ以外に読めるものがなかったからだ。Unreal の公式 AI 機能は見つからず、「存在しない」ではなく「確認できなかった」と書いた。中国メーカーの線は Tencent の混元シリーズしかカバーしておらず、NetEase や miHoYo の同種のツールは調べていない。
ゲーム本体の部分にも触れていない。たとえば AI が生成したモデルをどうエンジンに取り込むか、ポリゴン数をどう最適化するか、LOD をどう設定するか。これらは別の題目だ。